飛鳥新社さまより「閃く脳の作り方」を頂きました。ありがとうございます。この本は皆さんにはもはや説明の必要もない、元「はやぶさ」プロジェクトマネージャ川口淳一郞先生が書かれた、今後の社会や人生を形成する上で必要な「飛躍を起こすのに必要な11のこと」について述べています。良き人生のバイブルとして、ご紹介させて頂きます。
--「閃く脳の作り方」 川口淳一郞/飛鳥新社---
■宇宙開発関係者の間で重要視される”95%”という数字。実はこれ、世界のロケット市場に於いて”優秀”とされる打上げ成功率。旅客機や観光バスが、20便の内の1便が目的地に着かないとすればそれは一大事ですが、ロケットの世界ではこれでも一流とされるのです。つまり宇宙開発とはそれほどにシビアな世界であり、そこで各国がプライドと何千億円もの予算をかけて戦うその歴史は示唆に富んだ濃密なエピソードが詰まっているわけです。その歴史をおうことはとても面白いし、意味のあることだと思います。
テクノロジーと巨額の予算を投入してのなりふり構わない国家同士の殴り合いのドラマ。たとえばミリタリージャンルとして1941年から1945年の出来事を何十年かけて追い続ける人々も同じ事を感じ取っているのでしょう。
どんなジャンルであれ、その歴史を追うことは意味があると思いますが、しきしまが宇宙ジャンルを推す最大のポイントは”情報へのアクセスが容易だから”。衛星のプロジェクトは最低でも一機100億円以上のお金が動き、関わる人員もメーカも膨大です。そしてそこまでのリソースを注ぎ込んでも、確実にその投資を回収できるかどうかは分からない。それほどの技術の修羅場を、技術論文や事故の報告書、そして「個人の発言」レベルまで一次ソースにアクセスできるジャンルは、(浅学でお恥ずかしいですが)宇宙開発を除けば他に見あたりません。だからこそその成り立ちに夢中になれるわけで、一方でその修羅場をくぐり抜けてきた人達には、ぜひその経験をアウトプットしてもらいたいと思っていたのです。そうした経験は何も宇宙開発に留まらず広く産業にも人の生き方にも役に立つはずです。
・・・はい、前振りのつもりが長くなりました。
・と、いうわけで今回の「閃く脳の作り方」は願ってもいないほどの人物がこれまた願ってもないテーマで書いてくださった本として、この本を企画してくださった飛鳥新社様には重ねてに御礼を申し上げたいです。
この本では、もちろん宇宙開発の記述もありますが、本筋としてはもっと外側の、生き方だったり社会の成り立ちだったりについてのヒントが川口先生の宇宙開発的な経験を通して語られています。私が面白いと思ったテーマをすこし並べると、こんな感じ。
・「宇宙開発と原発の共通点-アクセス不能」
・「最善を期待するのは最悪のリスクを背負い込むこと」
・「本当に”機が熟す”ことはあるのか」
・「鯛の切り身よりメザシになれ」
私個人としては「原発と宇宙開発の共通点」という工学的アプローチが大変に興味深くツボにはまりました。両者とも事故発生時に直接人間が手出しできない筈なのに、それでも原発は作業員が原子炉建屋に突入して手動で対応に当たる事を前提に作られている。という事。
川口先生が「震災後や原発」について語っておられるのは興味深いです。いまの日本はとにもかくにも見えないリスクにがんじがらめにされています。宇宙開発は失敗に対してとてもシビアです。一切の手抜きは通じず、些細な失敗であっさりと100億円の宇宙機を失うことがあり、それでいて電力業界のように莫大な資金力でマスコミを黙らせることも出来ません。
そうした修羅場を経験してきた川口先生が、様々な人生のリスクをどの様に”仕分け”していくのか、その方法論が一冊の本にまとまっていることは大変に価値のあることだと思います。”川口流 リスク仕分け”とでも言えばいいのでしょうか。世の中怖いことばかりだけど、怖がることに疲れてしまった人々には良いバイブルになるのではと思います。
以前、「断捨離」というライフスタイルがブームになりましたが、宇宙開発の現場で培った「決断の為のノウハウ」がまとまったこの本も、そうした人生の一助として注目される様になればよいと思います。
【おしらせ】星野書店近鉄パッセ店で販売を記念した川口先生のサイン会があるそうです。
http://www.rakuten.ne.jp/gold/hoshinobk/sub2.htm
飛鳥新社様、素晴らしい本をありがとうございました。
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