以前、都内某所で「国民的支持を取り付けるプロジェクトの条件」なんて内容のお話を聞かせていただいたことがあります。こうこうこういう要素が揃うと国民的な支持が得られますよ、という条件が5つだか6つだかあげられていたのですが、自分でも常々考えていた事柄の正解が目の前に明文化されて出てきたことに軽い衝撃を覚えたものでした。「はやぶさ」が何故広く受け入れられたのかというのが、この法則を使うとはっきり分かってくるわけです。
ですが、はやぶさが受け入れられた背景には更に別な要素があるんではないかと色々考えておりました。他のミッションと比べてみると、はやぶさが他の探査機に比べて恵まれている点が2つあるのですよね。まずは、ミッションの起承転結がハッキリしていること。そして科学ミッションを物語として翻訳してくれるサポート層に恵まれたこと。
前者は、はやぶさを物語とする際に無くてはならない要素です。打ちあがった後は「特定の対象を延々と観測を続ける」というのでは、(ミッションの優劣とかは別として)物語としては落としどころを作るのが難しいです。さらにミッションのクライマックスが1ヶ月程度であったことも熱し易く冷めにくい期間設定であったかもしれません。
そして後者、は説明の必要も無いのですかね。はやぶさは広報的にもキーマンに恵まれました。はやぶさの父とも言える川口プロマネを初めとするISAS側のキャラクターの豊富さに加えて、ミッションの状況をリアルタイムに的確に伝えてくださったL/Dの松浦さんや、「おつかい出来た」のイラストの人のような科学ミッションを物語に翻訳してしまう人たちが居たお陰であれほどの盛り上がりを見せることが出来たのでしょう。当時は擬人化ブームの絶頂期でもありましたし、その辺もプラスに働いたか。
となると、はやぶさのような盛り上がりを他の探査機に求めるのは大変に厳しいです。この理屈で行くとはやぶさと同様に支持を得られた可能性のある衛星は、ハレー彗星探査機「すいせい」や、技術試験衛星「おりひめ・ひこぼし」あたりしかありません。
そういう意味で気になるのが最近話題の「かぐや」です。先日のメッセージ募集の顛末を見るにJaxaの広報の今後ってのは、正直不安が残ります。月に行くのは歴史上初めてでもなく、各国がプロジェクトを立ち上げてる中での船出です。はやぶさほど熱狂的な支持が得られないのは当たりまえなのです。メッセージの量と探査の質は無関係、かぐやなりのいいところを前面に出して、その良さをJaxaさんには語っていただきたいなあと思います。
んで本題。打ち上げから随分たってしまいましたが、ウチの「かぐや」です。実機の彼女は国産衛星の中で1,2を争う美人だと思いますよ。科学探査衛星で3トンというのはこれまでの探査機に比べて文字通り桁違いの大きさで「はやぶさ」の6倍近く。今までになく”お姉さん”として設定しています。衛星としては大変に珍しいですが、生まれたばかりなのに「かぐや」という名前付けでキャラクターが決まってしまっているので、その枠内からはみ出さないようにデザインするのにすったもんだいたしました。彼女は貧乏の代名詞である宇宙研でなく、旧NASDA生まれの科学衛星ということで色々とお嬢様ですから、仕事道具である観測機器はレイルシステムを介してフレームに固定することでブルジョア風を演出してみました。