★「はやぶさ」の影にすっかり隠れてしまっていますが、金星探査機「あかつき」が5月18日打上げられます。金星の気象を観測する、いわば「金星ひまわり」とも言える衛星です。あかつき探査機は、「はやぶさ」の直系には当たりませんがそれでも妹になるのかな。技術的にはそれなりに色んなところを引き継いでいるので。開発期間中にISASからJAXAへの組織改編に巻き込まれ、打上げロケットまで変わってしまったという苦労人。搭載されるメッセージの募集に際して、初音ミクを金星へのキャンペーンが一部で行われたことも記憶に新しいです。
【ニコニコ動画】[JAXA][あかつき]金星大気の謎に挑むわたしもこの「あかつき」キャンペーンに色紙を贈らせて頂いたのですが、その記念品として「あかつき」に搭載されたプレートのレプリカを頂きました。ありがとうございます。
ご存じない方に説明すると、人工衛星はバランスを取るため、全ての機器を搭載したあと「オモリ」を乗せる必要があります。せっかく使える重量をただのオモリで消費するのもつまらないので、ここにみんなで寄せ書きしたら面白かろう、というのがそもそもの始まりです。メッセージはプレート表面に顕微鏡で読めるレベルまで縮小されて印字されます。蛇足ながら、このプレートにあてられる重量は、初めからバランス取りのウエイトに当てられていたモノで、これを搭載することで探査機のペイロードが減少することはありません。
さて、振り返ってみると、一番最初にこのキャンペーンが行われたのは1998年に打上げられた火星探査機「のぞみ」でした。インターネットも現在に比べればまだまだ未成熟で、キャンペーンは葉書による申し込みでした。この募集に手を挙げた人々の数は27万人にも達し、押し寄せる葉書からメッセージを切り抜き縮小して、並べて貼り付ける。この作業は広報部のみならず、他の職員を巻き込んで連日連夜行われました。残念ながら「のぞみ」は火星の周回軌道に入ることが出来ず、ミッションは失敗に終わります。27万人のメッセージは今も太陽系周回軌道を「のぞみ」と共にまわっています。
次のミッション、「のぞみ」の弔い合戦となったのが、ご存じ小惑星探査機「はやぶさ」でした。「ほしの王子様」キャンペーンには88万もの人が手を挙げました。この時は名前のみの募集でありましたが、テキストデータのみとなったお陰で、現在でもイベントで自分の名前を乗客名簿の中から検索を行うことが出来ます。署名は「はやぶさ」のターゲットマーカに搭載され、小惑星イトカワの地表に今も存在しています。実はターゲットマーカは3つありまして、「はやぶさ」は最後の一つをまだ手元に持っているはずです。これはあとで確認する必要がありますが、もしかしたらイトカワへ送り出した署名が、「はやぶさ」と共にたびをして地球へ戻ってくるかも知れません(3つ目のマーカに署名が載っているのかは未確認です)。
そして「かぐや」。応募総数は41万。「月に願いを」ということで、前回の名前のみから、今回は願い事を書き込めるようになったのですが、色々と記入項目が増えてしまったこともあったのでしょうか。一方でSELENEミッションは無事に成功を収め、メッセージボードは現在は月の地表に埋もれています。
「あかつき」はこの「かぐや」に続くミッションであり、応募総数は26万ほど。今回はメッセージ受領証として金星行きのチケットが発行されました。「のぞみ」の時は届いたかどうかも確認が難しかったので、こうした記念証が手元に残るのはいいですね。
とはいえ、メッセージキャンペーンの応募総数は右肩上がりとはいえず、「あかつき」のキャンペーンは「はやぶさ」ほどには至りませんでした。数字は減少傾向にありますがキャンペーン自体の価値が失われているわけではありません。このご時世では難しいことは百も承知ですが、あまり数字ばかりを追いかけると、ノルマノルマと無意味な数字ばかりが一人歩きしかねません。この辺でメッセージキャンペーンの意義を一回見直してみる時期なのではないのかなあ、と思います。
「あかつき」のメッセージプレートもすでに探査機本体に取り付けられ、打上をまつばかり。打上まで日がありませんが、明日以降、数回に分けてちょとした解説をしていきたいと思います。
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