本日、5月24日12時5分。陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)の打上げが行われます。正午打ち上げの人工衛星というのはとても珍しく、また週末と言うことで全国各地で打上げに関するイベントが行われるようです。しきしまは宇宙研会場でみるつもり。
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地球観測衛星はさまざまな種類がありますが、「だいち2」は大型の合成開口レーダーを用いて地表を三次元スキャンしていくのが特徴。つまり「だいち2」は地球を丸ごとの三次元立体をつくることが可能です。
人工衛星の合成開口レーダによる地表探査、その特徴は全地球レベルでなおかつ何年分も蓄積した圧倒的なデータライブラリにあります。
見過ごされがちなことですが、衛星による地表探査は一度きりではありません。「だいち2」は16日で地球全土を観測できる軌道を飛び、5年ほど活動を続けます。その間に取得した地表データはたった1回分のデータであっても様々な恩恵をもたらしますが、これらのデータを何年分も重ね合わせ加減乗除様々な加工することで絶大な威力を発揮します。
例えば飛行機を飛ばすことすら難儀な絶海の孤島の火山活動を「精密」に「定期的に」「安く」「安全」に探査することが出来ます。たとえ火口が噴煙に覆われていても「だいち2」の合成開口レーダであれば噴煙の下の火口の形状を詳細に把握することが出来るのです。
さらには広大な飛行場。地盤沈下に悩む海上に建設された巨大な空港も「だいち2」であればその沈下がひと目で分かり、老朽化が問題となっている日本全国の社会インフラのメンテナンスにも大きく役に立てるのです。
そしてアマゾンの森林伐採。過去に得られた密林のデータを重ね合わせることで森の中の違法伐採道路の様子も分かります。年中雨期で雲が多く、光学カメラを積んだ偵察衛星では観測できない雲の下を「だいち2」の合成開口レーダは見通すことが出来るのです。
我々が昨今お世話になっているハザードマップなどはまさにこうした地表観測データの恩恵によるものです。
3年前までその重要な任務を背負っていたのが先代の「だいち」衛星でした。初代「だいち」は2006年から運用が始まり、東日本大震災ではその大きな地殻変動を捉えることに成功しましたが、震災からわずか二ヶ月後に機能を停止してしまいます。「だいち」は設計寿命を大幅に超えて活動をつづけていましたからその停止に非があるわけではないのですが、すぐに新しい衛星を用意できる状況に無かった日本は、この事故によって大きくダメージを受けてしまいます。以降、緊急時には他国の衛星からデータを買うことになり、衛星による国土観測は大幅に停滞してしまいました。
前述したとおり衛星の観測データは蓄積してナンボ。歯抜けの実験データに意味が無いように、本来であればレーダー観測が三年にもわたって途切れてしまうことは望ましいことではありません。
そこで後継機「だいち2」の登場です。「だいち2」は初代「だいち」衛星喪失後、補正予算の充当などで最優先、急ピッチで開発が進められ、いよいよ今日打上げられるまでになりました。
震災から三年、ようやく軌道上に返り咲く日本の地球観測衛星。「だいち2」が眺める日本の姿はどの様なものでしょうか。三年のギャップがとても悲しくはあり、今はとても楽しみであるのです。
「だいち2」のミッション成功を心よりお祈り申し上げます。
・「だいち2」打上げに関する情報はこちらからどうぞ↓
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