金星探査機「あかつき」は本日08時49分金星周回軌道投入のための減速噴射を行いましたが、金星の裏側の通信不可帯を抜けたあとも通信が回復せず一時的な通信途絶の状態となりました。1時間後の10時30分以降、LGアンテナ(小型アンテナ)を用いた通信により「あかつき」の無事が確認されましたが、このアンテナは通信速度が遅くデータのダウンロードに時間がかかるため詳細は未だ不明です。金星周回軌道に投入されたかどうかの成否の判明も本日22時以降の記者会見による発表となるとおもいます。
現在分かっていることは
・予定時間に噴射を開始したこと。
・何らかの理由でMGアンテナ(中型アンテナ)が使えず、LGアンテナでの通信しか行えないこと。
---のみです。とにかく今はMGアンテナもしくは大型のLGアンテナを使ってデータをダウンロードして状況を把握しなければなりませんが、何故か「あかつき」のMGアンテナとの通信リンクがなかなか確立できないとのこと。
続報が入りましたら更新します。
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【1900時記者会見の内容の追記】
・コマンドは通っている
・現在はセーフホールドモードに入っていると推定
・スピン安定状態に入っている(10分に1回の周期?)
・現在は三軸安定モードに入れるためのコマンドを
「あかつき」に通そうとしている
・テレメトリはとれていない
19時の記者会見・・・というか記者向けレクチャーによる追記です。 とりあえず「あかつき」は衛星の生存を最優先するセーフホールドモードに入っていると推定されます。このモードに入ると衛星は太陽に太陽電池を向けて、コマの様に回転して機体を安定させながら地球からの指令を待ちます。いまはこの回転を止めて、MGアンテナを地球に向けるべく作業をしているところ。機体の様子からネズミ花火のように妙なスピンをしているわけでも無さそうです。軌道に投入されたかどうかは現在調査中。
以上です。
※セーフホールドモードの解説図は回転方向が明らかに違っていることが分かったので取り下げます。失礼致しました。
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【22時の記者会見による情報】
・探査機はこちらからのコマンドに対して反応することを確認した
・MGアンテナへの切り替えが出来なかったのは地上局のアン
テナの向きが正確でなかったことが原因の可能性
・MGアンテナは健全である
・ 現在は姿勢変更よりもデータのダウンロードを優先
・軌道の詳細は8日の昼頃
22時の記者会見が行われました。基本的に19時時点での情報の補強という感じですが、幾分明るさが見えてきました。これまでMGアンテナに切り換えが出来なかった理由が、地上局のアンテナの向きが正確では無かった為、つまり探査機の故障では無かったとの見方が出てきたことは大きいです。なので現在ではMGアンテナによる通信が可能なことが分かっています。「1:こちらからのコマンドにキチンと反応すること」「2:通信アンテナは健全」という点から探査機自身については深刻な損傷は負っていないのでは?という雰囲気です(何かが起きたのは間違いないが、何かが壊れた可能性を示す事象が無い)。
「あかつき」は10分周期で回転しているわけですが、回転を止めて(比較的高速な)MGアンテナで腰を据えて通信することよりも、回転しながら(低速な)LGアンテナでぼちぼちデータを降ろしていくように方針が変更されている様なので、現在は、探査機の体調を記録したハウスキーピングデータがこのLGアンテナによってダウンロードされたいるところだと思います。
一方で「あかつき」がどのような軌道を飛んでいるのかは未だ不明です。8日の昼には軌道も判明するとのことですが、仮に「あかつき」が金星の周回軌道に乗れていないとすれば、現在モーレツなスピードであらぬ方向へ飛んでいる可能性もあり、どんどんどんどん金星から離れて言ってしまいます。本来ならばすぐにでも「あかつき」の位置を確認して軌道修正を行わなければなりません。
今日一日をまとめるとするのなら、山手線「金星駅」を降りるはずだった「あかつき」君との電話が「いま降りるヨー」で切れて、いきなり1時間音信不通になった。そしてポケベルでの連絡しかできなくなった。事故を起こしたのかも知れないし、急病かも知れないし、金星駅でキチンと降りたのかも分からない。急病ならば救急車を呼ばないといけないけど、それよりも金星駅で降りたのか確認しないと「あかつき」君は有無を言わさず山手線一周旅行(1周で四年かかる)に旅立ってしまう。でもこのポケベルは1秒に1文字しか送ってこないし、本当ならばポケベルでなくて、携帯で連絡してこいと言いたいけど、その場合は窓側に移動させないといけないし、そのあいだに電車はどんどん金星駅から離れていく(かも知れない)。んで「あかつき」君の位置を調べてもらう携帯GPSサービスは位置の特定に明日の昼までかかる・・・。今はポケベル(8bps)を通じて「あかつき」君が死んでいないことを確認出来ているだけ、という状況です。
トラブルが起きてしまったことは残念ですが、「はやぶさ」の時と違い「あかつき」はまだまだ0.5才のピチピチの探査機です。セーフホールドモードに入っているようですから太陽の光も十分浴びているし、まずは死ぬ心配もない。通信だってできる。地球周回の衛星であれば、なんぼでも復活の見通しは立てられる状況です。最悪の危機からは脱したのだと思いますが、とにかくどういう軌道を飛んでいるのかが分からないと何とも言えません。ただ見守るのみです。
【補足】
※HG(ハイゲイン)アンテナ:大型アンテナ。通信速い。アンテナはレーザーのように正確に向けないとダメ。
※MG(ミドルゲイン)アンテナ:中型アンテナ。通信そこそこ。懐中電灯の如くアンテナを何処に向けてもそこそこ通じる。
※LG(ローゲイン)アンテナ:小型アンテナ。通信超遅い。ろうそくの光のように、とりあえず向きがどうでもなんとか通信できちゃう。でも遅い。
バッテリーへの切替時になにか起こったんでしょうか…。
通信の復帰と、無事金星周回軌道に乗っていることを祈るばかりです。
投稿情報: Tak | 2010/12/08 02:01
10分/回転だと、12分の減速加速では1回転していないのかな?
減速開始時に回転力与えれば回りますが。
外力がなく姿勢制御ができていなければ、⊿θの積分値で10min/roundは逆算できるのでは?
って、機体のモーメントわかんなきゃ無理か。
減速終了時の角度がわかればtan⊿θが減速できなかったエネルギー量になる→衛星軌道周期が予測できるのではないだろおか?
高校数学レベルの戯言で申し訳ないのだが、だれか突っ込んでくだされ。(平伏
投稿情報: smd | 2010/12/07 21:24
減速時に姿勢くずれたんでしょうか?
減速加速度がわかっていれば10分周期というのが探査機一回転以上したか確認できそうな気がしますが・・・。
1回転以上していれば、減速が足りない事になると思われ。
投稿情報: smd | 2010/12/07 20:10
スピン安定でセーフホールドモードになってるらしいですが、何とか無事に復帰してほしい。
投稿情報: げんべ | 2010/12/07 19:49