どうもこんにちは。宇宙関係では微笑ましいニュースが続いています。
HTV2のドッキング成功を皮切りにESAのATV-2、そして今年で26歳にもなろうかというスペースシャトル「ディスカバリー」が立て続けにISS(国際宇宙ステーション)へのドッキングを行いました。これで現在のISSには合計6隻の宇宙船が係留されていることになります。これほどの数の宇宙船が一堂に会するのは宇宙開発史上最初で最後でしょう。
この血のたぎりを皆さんと分かち合いたかったのですが、どこにも完全な解説図が無くて、色々な広報素材を切った貼ったして作ってみました。あくまで参考で資料的価値はありません(とりあえずtwitpicにupしたバージョンからご指摘頂いた部分を修正しました)。
これほどのシチュエーションですし、もちろん撮影に向けた検討も行われているようで、6隻のうち1隻(図の24S)を分離させて行う予定とのこと。
ちょっとだけ説明をしますと、ISSはこの図の左から右へ向かって飛びます。つまりHTV側が船首、ATV側が船尾になります。ATVがエンジン噴射でISSの軌道を押し上げることが出来るという理由がこの図をみれば何となく理解して頂けると思います。
ついでにもうひとつ。このISSの船首に位置しているのは、ヨーロッパの「コロンバス」モジュールと、日本の「きぼう」モジュールです。船首方向はデブリが良く飛んでくる上に無重力実験場としてあまり条件が良くない、いわば地価が低い場所。安くない金を払って研究施設を作ったのになんでこんな場所に追いやられているんだというのが、実は建設開始当時の各国の力関係を象徴していたりします。どんなに言葉の上で「対等なパートナー」と言ったところで技術が無ければいつまで経ってもこうした扱いから抜け出ることは出来ません。
ISSは世界15ヶ国が協力して運営、建設をすすめている巨大施設です。おおざっぱに分ければアメリカ・ロシア・ヨーロッパ・日本がそれぞれに持ち寄ったモジュールとカナダが製作した大型ロボットアームの集合体であり、さらにここに各国が建造した5種類の宇宙船が往来します。その10年以上に渡る建設運営に当たり、ISSの中には各国の安全基準や、様々な工業規格(ドッキングポートの形から、ケーブルの端子から、スイッチの向き、飛行士の訓練まで)が、調整、整理されて存在しています。つまりはこの船は世界各国の習慣や技術や人間そのものが宇宙という極限状態の中で凝縮された一種のミニ地球。宇宙実験施設であるISSですがそれは工学実験にとどまらず、同時に国境を越えた次世代の安全保障の実験場でもあるのです。
凄く面白い題材ではあるのですが、なかなかその魅力が伝わらず、どこでも扱いが低いのですよねえ・・・。
※追記
紹介の仕方が乱暴で済みませんが、NASA公開のISSの現在の宇宙船結合状態の写真を何枚か。
1・ATV2とソユーズとプログレス。三隻そろい踏み。
http://www.nasa.gov/images/content/520884main_iss026e029296_full.jpg
2・ シャトルドッキングのためによいしょよいしょと場所を空けるHTV2
http://www.nasa.gov/images/content/519969main_iss026e028076_full.jpg
3・ 主役は最後に登場!引退フライトを迎えた「ディスカバリー」最後のドッキング。
http://www.nasa.gov/images/content/521347main_iss026e030179_full.jpg
4・ISSに寄り添って、アームで掴んでもらうのをじっと待つHTV2。これはJAXAのサイトから
http://issstream.tksc.jaxa.jp/iss/photo/iss026e020990.jpg
5・HTVもっと大きいの。再びNASAのサイトから
http://spaceflight.nasa.gov/gallery/images/station/crew-26/hires/iss026e020917.jpg
6・シャトルのうろこのアップ。愛情たっぷりのメンテがされているとはいえやっぱり大ベテランの風格が漂います。
http://spaceflight.nasa.gov/gallery/images/station/crew-26/hires/iss026e030066.jpg
7・そして最後にわれらがISS。HTVは反対側に引っ越したのでこちらからは見えません。
http://spaceflight.nasa.gov/gallery/images/station/crew-26/hires/s133e006859.jpg