H-IIA21号機打ち上げ解説、第三夜目です。今回妙にイラストが縦長です。現地ではすでにロケットが射点に据え付けられていますが、心配されていた天気も何とかなりそうですね。
【H-IIA_Flight21・ここに注目(その3)】 「白いH-IIA」
■さて今回の打ち上げの3つ目の注目点は白い試験塗装を施されたH-IIAです。H-IIAももうすぐ10歳。すっかり安定したロケットとなりましたが、世界のトップレベルを維持するためには絶え間ない改良が欠かせません。今回のフライトでは将来の改良計画に向けた予備実験としていくつかの項目が予定されています。何よりも目につくのがロケットの二段目機体が白く塗装されることです。
数年後に実用化されるH-IIA高機能型は、エンジンを一端止めて再点火したり、ユルユルと長く燃焼させることで、より高い軌道に衛星を打ち上げることを目指しています。その為に蒸発しやすい液体酸素や液体水素の燃料タンクを断熱して、これらの推進剤が蒸発によって浪費されるのを防がねばなりません。21号機ではタンクの表面を白く塗装して外壁の温度条件の変化が推進剤の蒸発速度にどのような影響を及ぼすのかを試験します。
【H-IIA_Flight21・ここに注目(その4)】 「初の商業打上げ」
■そしてこの打ち上げの最後のポイント。それはこの21号機には初めて海外の衛星が”お客様”として乗っていることです。H-IIAは今回初めて”商売”として打ち上げを行います。これは日本の宇宙開発史上の悲願であった商業衛星打上げ第一号となります。
H-IIAは力持ちなので「しずく」を打上げるだけならまだまだ余裕があります。そこで「しずく」の頭の上に席をもう一つ作ってそこにお客さんに乗ってもらうのです(それでも余裕があるので小さな衛星がさらに2機乗っています)。
”信頼”と”実績”が重要視される宇宙業界に於いて日本は商業打ち上げ実績が皆無であり、これまで世界の衛星ユーザーから相手にされてきませんでした。しかし今回初めて韓国の衛星が第一号として乗り込むことになったのです。ぶっちゃけて言えば今回の打ち上げは金銭的な儲けにはなりませんが、実績”ゼロ”の日本にとって、この打ち上げは将来に向けた大きな一歩なのです。
第一期水循環変動観測衛星「しずく」打上げは
5月18日(金)01時39分
を予定しています。
以上解説終わり。
21号機打上げ成功をお祈りします。20120517
--参考サイト---
・しずく打ち上げ特設サイト
http://www.jaxa.jp/countdown/f21/index_j.html
----------------
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。