-希望の星を掲げよう。僕らの頭上に僕らの星を。-
小惑星探査機「はやぶさ」は2010年6月13日2307時(推定)、7年の航海を終え地球帰還を果たしました。現地オーストラリアは好天に恵まれたお陰で、大変に美しいその最後を20万人以上の人が看取ることが出来ました。
「はやぶさ」は命令以上の反応を返してくれると中の人が述べるくらいに、そしてそれを納得してしまうくらい最後の最後まで不思議な宇宙機だったと思います。
「はやぶさ」は大気圏突入から3時間前の1951時に自身の子ともいえるカプセルを放出、これで任務を終えたことになります。そしてここから3時間は、「はやぶさ」にとって最後の思いで作り。消滅までの機体のデータ取りと並行してそれまで予定されていなかった地球撮影ミッションが始まりました。報道では最後の力を振り絞って・・・と記述されるその撮影も壮絶なモノでした。
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カプセル放出の衝撃で姿勢を崩した「はやぶさ」はまず姿勢を立て直し、ついで地球撮影のミッションに挑む、予定でした。しかし「はやぶさ」の姿勢制御装置はそのほとんどが機能を失っており、使えるのはキセノンジェットとリアクションホイールだけ。地球撮影のために機体を傾けるのは並大抵の事ではありませんでした。残る時間は2時間半。姿勢制御のキセノンジェットをふかしても、その本当に微弱な力では姿勢はなかなか変えられません。そのうえ今はもう一番小さな低利得アンテナしか使えないので1枚撮影してもそのデータを地球にダウンロードするのに20分以上かかるのです。まず、姿勢を崩しゴマすり運動に入った体を安定させる、そして体を90°反転させ地球に体を向けなければならない。じりじりとしか向きを変えられない体と刻々と迫る時刻。しかも手に握るカメラは、3年前から一度も電源を入れていません。
永遠にも感じられる二時間の末、最後の最後に出てきたのはたった一枚分にも満たない、下1/4が欠けたデータ。「はやぶさ」が水平線の向こうに消えるギリギリまで送り続けたものは、自分が7年前に旅だった地球の姿でした。
設計保障外の3年の月日をものともせず、「はやぶさ」から切り離されたカプセルは、速度差がほとんど無いのでお互いの距離は10cm単位でしかほとんど離れていないだろうと推測されました。父の元へと帰るカプセルの姿を、「はやぶさ」はすぐ後ろから、それでも決してジャマしないように見つめたまま最後を迎えたことでしょう。
カプセルは予想を上回る精度で着陸を遂げ、すでに本体もヒートシールドも回収作業を終えています。「はやぶさ」のカプセルは今週金曜には日本へ帰国の途につく予定です。
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「はやぶさ」のミッションは終わりをとげ、現代萌衛星図鑑の最終章も幕を閉じました。発売から1年を経てた現在でも多くの支持を頂いている事は、人生の少なくない時間をこの本に注ぎ込んだ私にとって望外の喜びそのものです。一年にわたり支えてくださった皆様には深く御礼を申し上げます。当「さてらいこ.jp」もまだしばらくは活動を継続します。今後の活動を等して皆様にすこしでも恩返しが出来ればと思う次第です。
過ぎてしまえばあっというまの1年間、皆様お付き合い頂きありがとうございました。そして最後に、おかえり「はやぶさ」。
>相模原に帰るまでが遠足です さん
ありがとうございます。みち+つくのふたりもいまごろ子供ビールで乾杯しているのだと思います。「はやぶさ」の最後のミッションはあまりに美しくドラマチックで、あああの子は最後の最後までヒロイン体質なんだなあと泣けてしまいました。
HTVとだいちどちらも良いですね、大好きです。私としても是非候補に加えたいのですが・・・まあ色々と。
>ミネタンさん
「はやぶさ」は私が描くまでもなく皆に愛された幸せな探査機だったのだなあと、いろいろなお話しを聞く度に思います。
「はやぶさ」はあくまで工学実証機ですから、その血を引き継いだ後輩がキチンと育ってくれることを願うばかりです。
>まおさん
また懐かしいネタを・・・。
投稿情報: しきしま@管理人 | 2010/06/29 02:54
久しぶり(といっても2~3週間ぶり)に、はやぶさの章の最後のページや、みちかちゃんとつくはちゃんの最後のコメントを見ました・・・。
思わず、ジワーと涙が出てきて止まりません。
当時、(当然成功して欲しいのですが、)機体は満身創痍、うまく行かなくても何もおかしくない状態。この記述のようには、現実はうまくいかないかもしれない。と激しく心配したことを、まるで昨日のことのように思い出しました。
そこに、あのはやぶさ本人の美しすぎる最後の姿が脳裏に浮かび、
頭の中で一緒になった瞬間、どうしても涙が止まらなくなってしまいました。
しきしま先生、こんな感動的な本を作っていただき、本当にありがとうございました。
何年かかってもいいので、ぜひ二巻もよろしくお願いします。
(出来れば「だいち」と「HTV」の話が読みたいです。)
今後、大量の宇宙関連本が出版されて、先生が資料津波に襲われることを願いつつ・・・
投稿情報: 相模原に帰るまでが遠足です | 2010/06/18 19:10
しきしまさん1年間、おつかれさま、そして、おかえり「はやぶさ」今の君は君の好きな地球を宇宙から見守ってるのかな・・・君はその身が満身創痍になってもこんな地球にカプセルと一緒にかけがえの無い感動をも持ち帰ってくれたね、君は本当に地球が好きなんだね、そして君は最後に地球にその思いのたけを託して光り輝いて消えて行ったね、PCやテレビのモニターに映し出された君が僕には天から舞い降りた天使に見えたよ、「はやぶさ」君にはきっと「心」が宿っていたんだろうね宇宙機の心が、だからこんなに奇跡が起こせたんだよね、「はやぶさ」奇跡のドラマをありがとう、本当にありがとう、そして使命をはたせて良かったね「はやぶさ」、君のこと絶対忘れない。
ただね「はやぶさ」今、君のふるさと日本には君達を否定する人達がいる、それが悔しい、寂しい、悲しい、それを知ったら君はどう思うのだろう、それだけが心残り、でもね「はやぶさ」君に感動して今世界中の人々が君達のことを応援してるよ、だから安心していいよ。
PS 『現代萌衛星図鑑』買いました、いい本作ってくれてありがとう リポDミネルバかわいいw
投稿情報: ミネタン | 2010/06/18 13:05
最後の地球の写真を見てピンときたので作ってみました。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm11088010
投稿情報: まお | 2010/06/17 19:36