昨日用事があって都内に入ったついでに話題のJAXA-iに行って来ました。当然のことながら「あかつき」の展示がありました。応援メーセージの記入台には中村プロジェクトマネージャをマスコットキャラ化した「キャプテン・スカイラーク」なるキャラクターが「私はまだ船を下りていませんよ」との決意を語っており胸が熱くなりました。
衛星のプロジェクトマネージャーという職業は過酷です。250億円のプロジェクト。ロケットから衛星までの巨大システムやら天体の運行まで、自分1人ではどうにもならない全ての事象について「税金での仕事なのだから100%の成功は当たり前」として全ての責任を負わされるのですから。
ネットの反応を見ていると「はやぶさ」ですら「結果的に成功しただけ」とするネガティブなコメントも見受けられます。だったら目標設定のハードルをぐぐっと今の30%位まで下げてミッションを行えば多分みんな文句は言わなくなるのかもしれません。でも成功が確約されるくらいハードルの低い技術開発って意味あるのかな?海外はこの技術開発レースを政府の後押しを受けて進めている状況なのに。
「あかつき」関係の更新は今年はないかと思っていたのですが、前回までの内容を訂正する情報が出て参りましたので急遽更新です。
【12月10日の記者会見】
・前回説明された姿勢変動は5秒で一回転したという激しいものでは無かったので訂正。
・噴射が中断されたのは燃料供給に問題があった為と判明。
・「あかつき」が遠ざかる金星の撮影に成功。観測機器は健在。
前回までの記者会見が大きく訂正されています。噴射143秒後に起きた姿勢変動は、噴射開始から152秒後に訂正。また360°回転したという内容も、おなじX軸に42°と訂正されています。
そしてもう一点。500Nスラスターの燃焼停止は、燃料の供給不足によるものという新事実も出てきました。地球上では自動車にガソリンを入れれば、ガソリンは重力の力でタンクからエンジンに届きます(もちろんポンプも使いますが)。しかし無重力空間を飛ぶ人工衛星はタンクを下に傾けても燃料はエンジンに流れていきません。そのためにヘリウムガスで燃料と酸化剤をエンジンに向かってぐぐっと押し込んでやらなければいけません。噴射が開始されれば、燃料は減りタンクの圧力は下がっていきます。そこにヘリウムガスを押し込んで圧を一定に保たれなければいけないのが、そうならなかった。なのに燃焼をやめたらゆっくりとタンク圧が戻った(←ここポイント!)。そして同じ燃料を使っている姿勢制御エンジンは問題なく使える(←ここもポイント)。
今回のトラブルはこの燃料をエンジンに押し込むための配管の一部に抵抗(目詰まり?)のような現象が起き燃料供給が不安定になったことが噴射失敗の原因との事。強烈な姿勢変動が否定されエンジン破損説もとりあえずは最有力ではなくなりました。
そしてもう一点。「あかつき」のセンサが遠ざかる金星を撮影しました。本来ならばいまだ人間ドック状態の「あかつき」にそういうことをしている余裕はないのですけど、センサが機能するかどうかを確認することも重要なミッションです。記者会見では「予定通りの画像」とコメントされており、センサは予定通りの性能を発揮することが確認されたのですが、それだけに遠ざかる金星を前にこのカメラに人生を預けた研究者、技術者の無念はいかばかりか。
しきしま個人として今後とも「あかつき」を応援致しますし見守っていきたいと思います。「負けるな!キャプテンスカイラーク!」
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