唐突ですが今週は宇宙が熱いのです。昨日(5月15日)にはロシアのソユーズ有人宇宙船が打上げられ、そして18日には我らがJAXA、第一期水循環変動観測衛星「しずく」が打上げられます。19日にはアメリカの無人輸送船ドラゴン搭載のファルコン9ロケットが打ちあげ予定。21日は金環日食もついてきます。というわけで、今週は「しずく」打ちあげと金環日食についてぼちぼちご紹介していきたいと思います。
【H-IIA_Flight21・ここに注目(その1)】 「衛星しずく」
■第一期水循環変動観測衛星「しずく」は水の循環を調べる地球観測衛星です。地表の水を調べることで大気の循環がどのように成り立っているのかを把握することが出来ます。例によって「これが何の役に立つのかそんな金があれば(以下・・・)」という話が出てくるので解説しますと、地球の水分量の把握は現在の生活に無くてはならないモノです。これらのデータはエルニーニョ現象等の長期気象変動の把握、短期気象情報の精度向上に必須で、海水温度データは漁業活動に於いて広く使われています。土壌水分量の把握は日本のみならず世界中の作物の育成計画に使われますし、干ばつなどの早期警戒などにも役立てられるなど世界の食糧の安定供給にとって水循環変動観測データは無くてはならないモノなのです。
・では簡単に衛星を見ていきましょう(JAXAのサイトへ→■)。衛星は2トン級の中型サイズ。「はやぶさ」の4倍といえば凄そうですが、ごく平均的なお手頃サイズといえます。観測装置は外見的にも大きな特徴であるAMSR2(高性能マイクロ波放射計2)が一つあるだけの大変シンプルな構成です。太陽電池パドルは左右に1枚ずつ配置した両翼式。「しずく」の軌道であれば片側一枚あれば事足りるのですが、衛星の生存性向上(片方のパドルが壊れても生き続けること)を狙って2枚に分散されています。最近の国産衛星の流行りですね。
・衛星バスは「はやぶさ」を製作した日本電気が新たに世に送り出す汎用型2トン級低軌道衛星バス。「はやぶさ」が「軽量化のために配線のコネクタすら省略」「熟練の技術者による組み立てを前提にした機械レイアウト」など、ギリギリの設計で性能向上を狙っていたのに対して、この衛星バスは今後の量産を見越してあらゆる面に余裕があり製造時の作業性や衛星のメンテナンス性にも大きな配慮がなされています。推進系(姿勢制御エンジン)はタンクやエンジンが一つのモジュールにまとめられ、衛星からぼこんと抜き取ることが出来ます。同じ日本電気生まれながらも「しずく」は「はやぶさ」の両極に位置するキャラクターの1人と言えます。
・彼女に優れた観測能力をもたらすのが頭の上の大きなお皿。AMSR2(高性能マイクロ波放射計2)と呼ばれるこのセンサは三菱電気が世界に誇る高分解能大型センサです。アンテナ直径が2m、重量250kgという大型アンテナが1.5秒に一回というスピードで衛星が生きている限り(5年以上)回り続けます。これだけ大きいセンサなので、その反動も大きく、「しずく」ではAMSR2のトルク打ち消し用に専用のリアクションホイールを搭載して対応しています。このセンサの視野を大きく取るために「しずく」の首はキリンのように長くなりました。
・細いアームに支えられたこのアンテナですが打上げ時には当然折りたたまれています。この2.7mもの構造物が宇宙空間で展開する様子は、この打ちあげの大きなハイライト。展開状況を把握するためにLED投光器つきのモニタリングカメラも装備されているので、美しい画像を見せてくれることでしょう。
第一期水循環変動観測衛星「しずく」打上げは5月18日(金)01時39分を予定しています。
以下、明日に続きます。
--参考サイト---
・しずく打ち上げ特設サイト
http://www.jaxa.jp/countdown/f21/index_j.html
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ちょっとCM:COMIC ZINさまで金星探査機「あかつき」本を解説した「Dawning Pretty」の取り扱いが始まりました。よろしくお願いします。