あ・・・、書けるよ・・・やっとコメントが返せるようになったみたいです。これで一安心。
まずは御礼から。「現代萌衛星図鑑
」の4刷が決まりました!とにもかくにも皆様のお陰です、ありがとうございます。発行に際していろいろを身を砕いてくださった方々にも、これでようやく顔向けができるのかな、という心境です。書店様にはもう並んでいるのではと思います。
COMIC_ZINさまへ衛星本在庫の搬入も行いました。現在品切れであるミネルバ本とかぐや前編も近日中にお求め頂ける様になると思います。
次に、・・・このお知らせはちゃんとエントリーを書いてからしっかりとやりたかったのですが・・・。
プラモデルメーカーのアオシマ文化教材社様で小型ソーラー電力セイル実証機「IKAROS(イカロス)」の応援キャンペーンを展開されています。ちっとだけしきしまもお手伝いさせて頂きました。締め切りは3月14日、皆様、お誘い合わせの上是非に。
さてさて、この小型ソーラー電力セイル実証機「IKAROS(イカロス)」は金星探査機「あかつき」とともに打上げられる技術実証衛星です。何が凄いって、凄いんですよこの子!実証機の名が示すとおりに技術的に面白い機能を沢山持っています。
最大の特徴は、衛星自体が太陽の光を1辺13.5mにもなる大きな帆で受け止めて、帆船のように推進するしくみであることです。ソーラーセイルは理論としては古くから考えられていたものですが、薄くて大きくて軽い帆を作ることが技術的に難しく、これまで実用化が困難とされていた推進装置です。またセイルを確実に展開させるためのマストも巨大になりこれをひたすらに軽く作ることもこれまた大変ですが、イカロスでは船体を回転させその遠心力を利用する、つまりソーラーセイルをバレリーナのスカートのようにぶわっと広げることで、展開機構の問題を克服するに至りました。
そしてこのイカロスの姿勢制御は、ソーラーセイルに設置された曇りガラスの様な姿勢制御デバイスで行われるところも技術的に面白いと思います。この曇りガラスは電気のオンオフで反射率が変わる仕組みを持っていまして、太陽光をめいいっぱい受けたいときには太陽光を鏡面反射させることで光を力として受け取り、逆に力を逃がしたいときには、太陽光を拡散反射することで受け流します。このデバイスが帆の4辺にそれぞれ設置されているので、これを別個に操作することで船体の向きを変えられるのです。
あと技術的特徴ではありませんが、開発期間がわずか二年半と大変に短く、さらに低コストであることも押さえておきたいところです。いわゆる衛星バスは開発リスク低減のため、すでに実績のあるMVロケット、LUNAR-A、はやぶさ、DARTS、あかつきなどの既存部品/既開発品が流用されるなど、すでに実績のある技術の寄せ集めであっさりとまとめられており、そのコストはだいたい通常衛星の数分の1に留まっているといわれています。一方で、イカロスの重量は300kgほどもあり、じつは「あかつき」衛星のドライ重量とたいして変わらなかったりするのですが、その辺はやはりH-2Aの能力の恩恵なのでしょうね。それにしても、ついに宇宙に上がることなく人生を終えた月探査機LUNAR-Aがこの様な形で宇宙を目指すことが出来るのは、なんとも不思議な気がします。
今から20年前の1990年、日本の「ひてん」衛星は世界で初めて惑星の高層大気を利用して衛星にブレーキをかける”エアロブレーキング”に成功します。この事実は国内マスコミから完全に無視されて関係者を落胆させるのですが、当時の米ヒューズ社の社内報に「ひてん」が取り上げられ、以下のような文章が掲載されました。
”この成功によりエアロブレーキはSFの世界から現実のものになった”。
2010年5月、私たちはこのミッションを通じて、太陽光推進という言葉が、SF用語からたんなる技術用語に転落する瞬間を目撃することになるのです。